詐欺破産行為の相手方も罰せられることがあるのか?
Q.詐欺破産行為の相手方も罰せられることがあるのか?
A.破産法第265条第1項第4号の詐欺破産行為について,情を知りながら,その相手方となった場合には,破産手続開始決定が確定した場合,詐欺破産罪として処罰される。
詐欺破産行為の相手方・・・
詐欺破産罪で処罰されるのは,当然のことですが,原則として詐欺破産行為をした者です。
もっとも,詐欺破産行為には,債務者の財産を不利益に処分したり,債務者に債務を不当に負担させたりする行為が含まれています。 こういう不利益処分行為や債務負担行為には,必ず相手方がいます。
不利益処分であれば,その不利益処分を受けた者,例えば,債務者の財産を無償で譲り受けた者などが挙げられます。
債務負担行為であれば,債務を債務者に引き受けさせることによって自らは債務を免れた者などが挙げられます。
これらの相手方も,事情によっては,詐欺破産行為に加担していると言える場合があります。 そのような場合に,このようないわば共犯的な相手方を放置しておくことは,詐欺破産罪を定めて不当な破産手続の利用を抑制しようとする法の趣旨に反します。
そこで,一定の場合には,詐欺破産行為の相手方も,詐欺破産行為者と同様に詐欺破産罪として処罰されることがあります。
情を知って・・・
破産法第265条第1項第4号に掲げる行為の相手方は,「情を知って」その詐欺破産行為の相手方となった場合,詐欺破産罪として処罰されます。
「情を知って」とは,事情を知りながらというほどの意味ですが,具体的に言うと,行為者が故意及び債権者を害する目的で詐欺破産行為をしていることを知りながら,という意味です。
客観的処罰条件・・・
相手方の詐欺破産罪も,やはり客観的処罰条件として,破産手続き開始決定が確定したことが必要とされています。
【破産法の関連書籍】
医療過誤でお悩みの方や医療問題に関する法律実務に興味をお持ちの方は,姉妹ブログ「医療過誤裁判の取扱説明書」をご覧ください。
詐欺破産罪の構成要件・・・詐欺破産罪となるのはどういう場合か?
Q.詐欺破産罪となるのはどういう場合か?
A.個人による破産法第256条第1項各号に掲げる行為が,故意及び債権者を害する目的でなされたことが必要となる。 さらに,処罰をするためには,破産手続開始決定が確定していることも必要となる。
個人の行為であること・・・
詐欺破産罪の対象となる行為は,個人の行為でなければなりません。 つまり,法人の行為は,詐欺破産罪とはならないということです。 ただし,法人の代表者が詐欺破産行為をした場合は,法人も処罰されることがあります。
個人であることが条件ですから,それが破産者であっても,第三者であっても,個人の行為であれば詐欺破産罪となる可能性があります。
破産法第265条第1項各号に掲げる行為・・・
詐欺破産罪の対象となる行為は,破産法第265条第1項各号に掲げる行為です。 これらの行為以外の行為は,どんな行為であれ,詐欺破産罪として処罰されることはありません。
故意及び債権者を害する目的・・・
個人が破産法第265条第1項各号に掲げる行為をしたとしても,その行為が行為をした人の故意に基づくものでなければなりません。
故意とは,法的に言うと,認識しているという意味です。 一般的に使われるような,「わざと」とか「意図的に」とかいう意味ではありません。
つまり,破産法第265条第1項各号に掲げる行為をしたことを自分で認識していれば,故意にその行為をしたといえるのです。
もっとも,詐欺破産罪では,単に故意があるだけでは足りません。 債権者を害する目的が必要となります。
ここでいう「債権者」とは,特定の債権者ではなく,すべての債権者を意味するものと考えられています。 また,「害する」とは,破産になる可能性があることを認識していることを意味するものと考えられています。
客観的処罰条件・・・
詐欺破産罪の構成要件は,上記の4つですが,その他にも,客観的処罰条件と呼ばれる条件があります。
構成要件とは,ある行為が犯罪として成立するための要件のことをいいます。 これに対し,客観的処罰条件とは,処罰のための条件です。
簡単に言うと,構成要件は満たしているので犯罪としては成立するけれども,それがなければ処罰することができないという条件のことです。
詐欺破産罪においては,破産手続開始決定が確定していることが客観的処罰条件となります。 つまり,詐欺破産罪の構成要件に該当する行為がなされたとしても,破産手続開始決定が確定していなければ,処罰することはできないということです。
【破産法の関連書籍】
労働問題でお悩みの方や労働問題に関する法律問題に興味をお持ちの方は,姉妹ブログ「労働法の取扱説明書」をご覧ください。
詐欺破産罪の構成要件・・・詐欺破産罪となるのはどんな行為か?
Q.詐欺破産罪となるのはどんな行為か?
A.破産法第265条第1項各号に掲げる行為である。
詐欺破産罪となる「行為」・・・
犯罪として処罰されるのは,「人」ではなく,「行為」です。 そのため,犯罪が成立するにはまず,何らかの「行為」がなければなりません。
破産犯罪である詐欺破産罪においてもそれは同様です。 では,破産犯罪が成立するためにどんな行為があることが必要かというと,「破産法第265条第1項各号に掲げる行為」です。
具体的には,以下の4つの行為が,詐欺破産罪の対象となる行為です。
- 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産,信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し,又は損壊する行為
- 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
- 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
- 債務者の財産を債権者の不利益に処分し,又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
債務者財産の隠匿・損壊・・・
債務者の財産は,破産手続において,破産財団として,財団債権者への弁済や破産債権者への配当の原資となる重要なものです。
言うまでもないとは思いますが,隠匿とは隠すという意味,損壊とは壊すという意味です。 配当の原資となる財産を隠したり,壊したりする行為が,破産手続においてもっとも悪質な行為であるということも言うまでもないでしょう。
債務者財産の譲渡又は債務負担の仮装行為・・・
上記のとおり破産手続上もっとも重要ともいえる債務者の財産を譲渡,つまり,誰かに譲り渡してしまう行為も,破産財団を減少させるという意味で,隠匿や損壊に匹敵するような悪質な行為であるということができます
債務者が債務を負担する行為,つまり,本来であれば破産債権や財団債権とはならなかったはずの債務を,債務者が余分に負担してしまう行為も,詐欺破産罪の対象となります。
債務者が債務を負担するということは,少なくともその債務の債権者の人数が増え,本来の債権者の配当が減少してしまうおそれがあるからです。
債務者財産の価格減少行為・・・
隠匿,損壊,譲渡などの行為は,債務者の財産を完全に配当から外してしまうような行為ですが,それ以外にも,債務者の財産を減少させる行為は,やはり悪質な行為といえます。
そこで,債務者の財産の価格を減損する行為は,詐欺破産罪の対象となる行為に挙げられています。
もっとも,単に価格を減損する行為というだけではなく,その減損が,債務者の財産の現状を改変することによってなされたものである必要があります。 隠匿・損壊・譲渡などとは違う形で,事実上,債務者財産の価格を減損する行為がこれに当たります。
例えば,債務者の財産である更地(「さらち」と読みます。何も建っていない土地のことです。)の土地に,何かを建てることによって,土地の価格を下げてしまうような行為が,これに当たります。
債務者財産の不利益処分,不利益な債務負担・・・
債務者財産の不利益処分とは,上記の価格減損行為とは異なり,少なくとも形式上は法律上有効な処分行為を対象としています。
具体的には,債務者の財産を無償であげてしまう行為や著しく安く売ってしまうような行為がこれに当たります。
債務者に,債権者にとって不利益な債務を負担させる行為も詐欺破産罪となることがあります。 このような債務を負担させると,やはり本来の債権者の配当等が減少することになってしまうからです。
【破産法の関連書籍】
・・・交通事故でお悩みの方や交通事故に関する法律問題に興味をお持ちの方は,姉妹ブログ「交通事故裁判の取扱説明書」をご覧ください。
詐欺破産罪とは?
Q.詐欺破産罪とは?
A.破産手続開始の前後を問わず,債権者を害する目的で,破産法第256条第1項各号のいずれかに該当する行為を罰する破産犯罪のことをいう。
詐欺破産罪・・・
【破産法 第265条】
1 破産手続開始の前後を問わず,債権者を害する目的で,次の各号のいずれかに該当する行為をした者は,債務者(相続財産の破産にあっては相続財産,信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは,10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。情を知って,第4号に掲げる行為の相手方となった者も,破産手続開始の決定が確定したときは,同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産,信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し,又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し,又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
2 前項に規定するもののほか,債務者について破産手続開始の決定がされ,又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら,債権者を害する目的で,破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく,その債務者の財産を取得し,又は第三者に取得させた者も,同項と同様とする。
詐欺破産罪とは,詐欺的行為によって,破産債権者に配当すべき財産を隠匿・損壊したり,債務を仮装したりする行為を罰する破産犯罪です。
破産手続は,総財産を処分する代わりに債務の負担から債務者を開放する代わりに,債権者からすれば,完全な債権の回収を図れなくなるという非常に不利益な手続です。
ただでさえ債権者にとっては不利益なのですから,当然のことながら,それ以上に債権者を不利益とする行為は厳に禁止されなければなりません。
そこで,そのような債権者を不利益にする行為の中でも特に悪質な行為,すなわち,破産手続を詐欺的に利用しようとする行為を処罰し,そのような行為を抑制しようとするのが,この詐欺破産罪です。
詐欺破産罪の構成要件・・・
詐欺破産罪の構成要件は,以下のとおりです。
- 個人の行為であること
- 265条第1項各号の行為がなされたこと
- 上記行為が故意に基づいてなされたこと
- 上記行為が債権者を害する行為に基づいてなされたこと
- 破産手続開始決定が確定したこと(客観的処罰条件)
なお,破産者だけでなく,上記のような詐欺破産行為の相手方も罰せられることがあります。 第256条第1項第2文の場合及び第2項の場合です。 これらの相手方も詐欺破産罪として処罰されます。
詐欺破産罪の刑罰・・・
詐欺破産罪に該当する行為をした場合には,10年以下の懲役または1000万円以下の罰金,あるいは,その両方の刑罰が科されます。
【破産法の関連書籍】
・・・離婚でお悩みの方や離婚に関する法律問題に興味をお持ちの方は,姉妹ブログ「離婚問題の取扱説明書」をご覧ください。
破産犯罪とは?
Q.破産犯罪とは?
A.破産法に規定されている破産手続・免責手続に関する犯罪類型のことをいう。
破産犯罪・・・
破産法には,犯罪に関する規定もあります。 もちろん,破産手続や免責手続に関係する犯罪の規定です。 このような犯罪類型のことを「破産犯罪」と呼びます。
破産手続は,基本的に,私法上の関係,もっと具体的に言うとお金の関係を規律するものです。 したがって,不正な行為をした者に対しては,免責不許可としたり損害賠償を支払わせたりというような私法的な制裁をもって対処するのが基本的なスタンスであるはずです。
しかし,免責不許可としたり損害賠償責任を負わせるだけでは十分とはいえないような,極めて悪質性の高い不正行為が行われることもあり得ます。
また,私法上の対処だけでは,そのような悪質性の高い不正行為を抑止する威嚇力として弱いということもあります。
そこで,破産手続を悪用して不当な利益を得ようとする行為をあらかじめ抑制するための威嚇として,破産犯罪という犯罪類型が設けられているのです。
破産犯罪の類型・・・
破産犯罪には,以下の3つの類型があります。
第1類型は,破産債権者の財産的利益を侵害する行為を罰する破産犯罪類型です。 実質的侵害罪と呼ばれています。 第1類型には,詐欺破産罪,特定債権者に対する担保供与罪があります。
第2類型は,破産手続の適正な進行を侵害する行為を罰する破産犯罪類型です。 手続的侵害罪と呼ばれています。 第2類型には,破産管財人の特別背任罪,破産者の説明・検査拒絶罪,重要財産開示拒絶罪,業務・財産の状況に関する物件の隠匿等罪,破産管財人の職務妨害罪等があります。
最後の第3類型は,破産者の経済的更生を侵害する行為を罰する犯罪類型です。 第3類型とは,面会強要罪などがあります。
【破産法の関連書籍】
・・・相続でお悩みの方や相続に関する法律問題に興味をお持ちの方は,「相続問題の取扱説明書」をご覧ください。


