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カテゴリ:【 ・取引履歴の開示】の記事一覧


貸金業者が取引履歴を開示してこない場合どうすべきか?

2009年08月30日

Q.貸金業者が取引履歴を開示してこない場合どうすべきか?


A.再開示を請求し,応じない場合には監督官庁に対して行政指導又は行政処分を求める申告をする。 なおも応じない場合には,推定計算を行う。



取引履歴不開示の問題・・・


引き直し計算をするための前提として,債権者から取引履歴を開示してもらう必要性があります。 記憶や他の書類によって取引の経過を推定によって再現する方法もありますが,これには限界があるからです。


ところが,一部貸金業者等は,取引履歴の一部を開示してこなかったり,ひどいところになると,まったく取引履歴を開示してこないという場合もあります。


この取引履歴不開示の問題は,債務整理における大問題の1つといってよいでしょう。



再開示請求・・・


オーソドックスな方法としては,完全な取引履歴を開示するまで,根気よく再開示を請求する方法があります。 これによって,完全な履歴を提出してくるという場合もなくはありません。


しかし,最初から全開示をしてこない業者の場合,そのまま再開示を請求しても効果がないという場合が多いと思います。 そこで,再開示を促すように,何らかの手を打つ必要があります。



行政処分を求める申告・・・


その1つの方法として,監督官庁に対して開示してこない業者に行政指導を求める申告書を提出するという方法があります。


つまり,貸金業者を監督する官庁から,その業者に対して,取引履歴を開示するように指導してもらうのです。


申告する監督官庁とは,都道府県知事による登録業者については都道府県知事,財務局による登録業者については財務局ということになります。


あるいは,さらに進んで,行政指導にとどまらず,もっと強制力の強い行政処分を求めるように申告をするということもありうるでしょう。


行政処分ということになれば,貸金業の登録を取り消されたり,業務停止命令が下されたりするなど,貸金業者にとっても相当の痛手となりますから,威嚇力も強くなります。


なお,改正された貸金業法によれば,取引履歴の開示義務が明文化され,さらに虚偽の開示をした場合には,登録取り消し又は1年以内の業務停止命令を受けることが,はっきりと規定されています。



それでも開示がない場合・・・


行政処分を求める申告を行ってもなお,取引履歴が開示されないという場合には,特定調停を行い,取引履歴を開示させるという方法も考えられます。


もっとも,強制力があるわけではないので,そもそも開示に非協力的な業者が応じる可能性は小さいかもしれません。


そうすると,やはり記憶や取引履歴以外の書類に基づいて取引の経過を再現し,推定計算を行うという方法を取らざるを得ないでしょう。


仮に推定計算の結果,過払金が発生しそうだという場合には,とりあえず推定計算に基づいて過払金返還請求訴訟を提起し,その裁判上で,裁判所を通じて取引履歴の開示を求めるという方法が考えられます。


裁判上で取引履歴の開示を求める方法としては,文書送付嘱託や調査嘱託という方法,あるいは,もっと強力な文書提出命令という制度を利用する方法があります。


なお,推定計算の結果,残債務が残ってしまいそうだという場合,普通は業者の方も全開示をしてきます(残があるときだけ全開示してくるというのが癪ですが・・・。)。


もしそれでも全開示をしてこないならば,放っておいて,相手方が裁判を提起してくるまで待ち,全開示して請求の根拠を示さなければ払わないと言って全開示を促すという方法があります。




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貸金業者に取引履歴を開示する義務があるのか?

2009年08月29日

Q.貸金業者に取引履歴を開示する義務があるのか?


A.貸金業者には,取引履歴の開示義務があるとするのが判例である。



取引履歴の開示義務とは・・・


引き直し計算をする前提として,債権者との間の全取引の経過を調査する必要があります。


とは言っても,今までの個々の取引について何らかの証拠を残しておいてあるという人の方が少ないでしょう。 そこで,貸金業者の方に,全取引の経過の履歴を開示するように求める必要が出てきます。


もっとも,貸金業者に対して取引履歴の開示を求めるとしても,業者の側に取引履歴の開示に応じる義務がなければ,意味がありません。


もしこの開示義務がなければ,貸金業者は取引履歴の開示になど応じないでしょう。 特に,過払金が発生するようなおそれのある場合には,なおさらです。


そこで,貸金業者に,この取引履歴の開示義務があるのか否かという点は,昔から,債務整理をするにあたって非常に重大な問題とされてきました。



取引履歴開示義務を認めた判例・・・


この大問題について,最高裁判所第三小法廷は,平成17年7月19日,画期的な判断を下しました。 以下にその一部を引用します。


【最三小判平成17・7・19】
(民集59巻6号1783頁,判時1908号3頁,判タ1188号213頁等)
「貸金業法は,罰則をもって貸金業者に業務帳簿の作成・備付け義務を課すことによって,貸金業の適正な運営を確保して貸金業者から貸付けを受ける債務者の利益の保護を図るとともに,債務内容に疑義が生じた場合は,これを業務帳簿によって明らかにし,みなし弁済をめぐる紛争も含めて,貸金業者と債務者との間の貸付けに関する紛争の発生を未然に防止し又は生じた紛争を速やかに解決することを図ったものと解するのが相当である。」
「以上のような貸金業法の趣旨に加えて,一般に,債務者は,債務内容を正確に把握できない場合には,弁済計画を立てることが困難となったり,過払金があるのにその返還を請求できないばかりか,更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど,大きな不利益を被る可能性があるのに対して,貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり,貸金業者に特段の負担は生じないことにかんがみると,貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。 そして,貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは,その行為は,違法性を有し,不法行為を構成するものというべきである。」



上記判例の意味・・・


上記判例の下線部分を読んでもらえば分かるように,最高裁は,貸金業者に取引履歴の開示義務があることを認めました。


そして,それは,「貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務」であるとし,「信義則」に基づいて発生する義務であるとしています。


もっとも,無制限に取引履歴開示義務が認められるわけではありません。 「その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り」において認められる義務であるとしています。


これはどういうことかと言うと,要するに貸金業者に対する嫌がらせとして開示を要求するなど,不当な目的・手段で開示要求をした場合であると考えられます。


しかし,そんな意図で取引履歴の開示を要求することなど普通は考えられませんから,結局,この「特段の事情」がある場合というのは,ほとんど考えられないと言ってよいでしょう。


そういう意味で,上記判例は,貸金業者の取引履歴の開示義務を,かなり広く認めたものということができると思います。



この判例の気になる点・・・


この判例は,貸金業者に取引履歴開示義務があることを示した画期的な判例であることは疑いないのですが,少し気になる点もありました。


まず,この判例が,不法行為に基づく損害賠償請求権の訴訟だということです。 この判例は,あくまで不法行為責任における注意義務として取引履歴開示義務を認めたものですから,これをそのまま一般的な取引の場合にも使えるのかどうかという点が少し気になります。


つまり,この取引履歴開示義務をもとに貸金業者に対して取引履歴開示請求訴訟をすることができるのかどうかまでは明確にはされていません。


また,この判例によれば,取引履歴開示を「拒絶した」場合のみ損害賠償請求が認められるという点も気になります。


つまり,「拒絶」ではなく,単に無くしたとか廃棄したとかを貸金業者が主張してきた場合にも,開示を「拒絶した」と言えるのかどうかについては明言されていません。


開示義務の対象が「保存している取引履歴」に限定されているところからすると,すでに保存されていないと言って反論された場合にはどうなるのかという点については明らかでないのです。



貸金業法改正による明文化・・・


このように上記判例にはちょっと気になる点がありました。


そこで,改正された貸金業法では,以下のとおり,貸金業者に取引履歴開示義務があるということが明文化され,さらに取引履歴の「保存」義務があることも明文化されました。


【貸金業法 第19条】
貸金業者は,内閣府令で定めるところにより,その営業所又は事務所ごとに,その業務に関する帳簿を備え,債務者ごとに貸付けの契約について契約年月日,貸付けの金額,受領金額その他内閣府令で定める事項を記載し,これを保存しなければならない。


【貸金業法 第19条の2】
債務者等又は債務者等であつた者その他内閣府令で定める者は,貸金業者に対し,内閣府令で定めるところにより,前条の帳簿(利害関係がある部分に限る。)の閲覧又は謄写を請求することができる。この場合において,貸金業者は,当該請求が当該請求を行つた者の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き,当該請求を拒むことができない。


これにより,今後は,貸金業者は取引履歴を保存してそれを開示しなければならない義務があるということがはっきりしたといえるでしょう。




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取引履歴の開示とは?

2009年08月28日

Q.取引履歴の開示とは?


A.債権者との間のすべての取引の経過の履歴を開示するよう債権者に対して請求すること。 受任通知の送付とともに,債務者との間のこれまでの取引の経過をすべて開示するよう請求するのが一般的である。



取引履歴とは・・・


債務整理をするためには,正確な債権調査が必要となってきます。 その基盤となるのが,それまでの全部の取引を利息制限法の制限利率に直して計算し直す「引き直し計算」です。


引き直し計算をするには,全部の取引の内容を知る必要があります。 日付,貸し借りの金額,利率,遅延損害金等です。


そして,これらを記載した履歴を「取引履歴」と呼びます。 債権者の方から「取引計算書」などという名称で送付されてくることもあります。



取引履歴の開示請求・・・


引き直し計算をするためには,取引経過を知る必要がありますが,それをすべて調査するというのはなかなか大変です。


そこで,債権者に取引履歴の開示を求めるのが一番手っ取り早いということになります。


貸金業者等は,それまでの取引をすべて記録しているはずです。 その記録をすべて開示してもらうのです。 取引履歴は,受任通知を送付するときに一緒に請求するのが一般的です。


すでに,最高裁判所の判決(これを「判例」といいます。)で,貸金業者等には取引履歴の開示義務があるという判断が示されています。 したがって,貸金業者等は取引履歴を開示しなければならないのです。


貸金業者が取引履歴開示義務に違反して,取引履歴を開示しなかった場合には,慰謝料等の損害賠償を請求できる場合があります。


なお,この取引履歴の開示請求は,別に弁護士等でなくても,債務者本人ですることができます。 ただし,悪質な貸金業者だと,相手が弁護士等の専門家でないということで,いい加減な履歴を開示してくるおそれがあります。


ご自分で請求されるときは,くれぐれも注意する必要があるでしょう。



取引履歴を開示してこない場合・・・


貸金業者等の中には,適当な取引履歴を開示してくるどころか,取引履歴をまったく開示しないとか,一部しか開示しないようなところもあります。


すでに廃棄してしまったなど適当な理由をつけて開示してこないのです。 債務整理における重大な問題の1つです。


貸金業者以外の債権者には開示義務はありませんが,利息の利率が低く引き直し計算の必要がないので,債務残高さえ分かれば,あまり問題になりません。


やはり,引き直し計算の必要があるほど高利で貸付けを行っている貸金業者からの取引履歴の未開示が,もっとも問題となります。


その場合,まずは根気よく開示ないしは再開示を請求していくことになります。 場合によっては,都道府県や財務局に行政処分を求めることも必要となってくるでしょう。


それでも開示が完全になされない場合には,債務者の方で一定の資料を用意しなければなりません。


例えば,契約書や請求書などを集める必要が出てきます。 そして,それらをもとに,記憶に従って,取引の経過を再現していくことになります。




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